幼少期からの発達障害に双極Ⅱ型障害が合併するケース増加中。対処の鍵とは?

大人になってから「発達障害かも」と気づいたが、実はさらに…

 それでは、今回の患者さんのケースです。

症例 3
発達障害の友人から、その症状を聞くうちに、自分も同じ症状があると気づいた患者さん。すでに出来上がっている人間関係に新たに入っていくのが苦手なタイプ

Aさん:30代の会社員女性。親しい友人女性から「実は私、ADHD(注意欠如・多動性障害)という発達障害だと病院で診断された」と打ち明けられ、聞き慣れない診断名に、「ADHD? それは、どういう症状があるの?」と、その友人に尋ねたところ、返ってきた答えがいずれも、Aさん自身に身に覚えがあることばかりだったと話します。

 「もしかしたら、私も発達障害なのではないか、いや、きっとそうだ!」と考えたAさんは、当クリニックを受診。診察で話を聞くと、小さい頃から「すぐに物を失くす」「忘れ物が多い」「スケジュール管理が苦手」「何から始めるか、優先順位をつけられない」と、苦手なことが多かったそうです。

 現在は、新しい人間関係が苦手であり、また、何かをやっている最中に、他の考えが浮かぶと、それまでやっていたことを放り出して、別のことを始めてしまうことが多く、他にも、突然、気分が高揚して爽快な日があると話します。

※こちらの例では、実際の患者さんの情報を特定できないように一部加工しています。

 今回の患者さんは、発達障害の友人の話を聞いて「自分も発達障害なのではないか」と疑いを持ち、当クリニックに来院した女性です。

 「発達障害」について、初めて聞く、あるいは聞いたことはあるが、詳しくは知らないという読者の皆さんのために、改めて、どういうものなのか説明しましょう。

発達障害って何? どんな症状がある?

【1】まず、発達障害は「病気」ではありません。生まれつきの「脳の機能障害」であり、ご両親から受け継いでいるものです。

 本人が幼少の頃に、言語や知的能力などに年齢相応の発達が見られない場合、それに周囲の大人たちが気づいて「発達障害」が発覚するケースがあります。

 また一方で、障害の程度がごく軽いために、障害由来の苦手なことがあっても、自分で対応する方法を見つけて、周囲の大人たちに「発達障害である」とは気づかれずに成長する場合もあります。

 しかし、この場合、成人して社会に出て働くようになると、苦手なことにも仕事として取り組まなければならず、ストレスを感じて「うつ」の症状が現れることも多く、病院を受診して初めて、発達障害であると分かる事例が増えています。

 このように、大人になってから発覚する発達障害は「大人の発達障害」と呼ばれています。その障害の特性や程度は人によって異なり、また、自分の障害の特性を知ることで、苦手なことへの対策を身に付けることができます。

【2】大人の発達障害では「ASD(自閉症スペクトラム障害)」と、「ADHD(注意欠如・多動性障害)」の主にこの2つがあります。

 障害によって、それぞれに「その障害由来の困りごと=特性」があり、得意なことと不得意なことが、はっきり分かれるのが特徴です。そして、その特性の表れ方は一人ひとり違います。ASDとADHDの両方に当てはまり、2つが併存している人が多いです。

 それぞれの障害の特徴は以下の通りです。

ASD(自閉症スペクトラム障害):
おとなしい人が多い。コミュニケーションの取り方、社会性、想像力に偏りがあり、空気を読むのが苦手。職場では人間関係を築くのが不得意で、目上の人に対して失礼な態度をとってしまうことも。こだわりが強く、働き方を柔軟に変えたり、臨機応変に計画を変更したりするのが難しい。

 <得意なこと>
 規則的、計画的に行う仕事。同じ作業を繰り返す仕事。専門知識を使う仕事、膨大な情報量を扱う仕事、製品を管理・整理する仕事。

 <不得意なこと>
 臨機応変に計画を変更する仕事。顧客ごとの個別対応を求められる仕事。対話中心で、形にならない仕事。

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ADHD(注意欠如・多動性障害):
忘れ物や失くし物が多く、不注意、衝動性、多動性(じっとしていることが苦手)があり、落ち着きがないように見える。仕事上のケアレスミスが多く、気を付けていてもミスは減りにくいため、文字や数字の細かい確認が多い仕事は不得意。長期的な計画を立て、じっくり進める仕事も苦手。

 <得意なこと>
 臨機応変に手早く作業する仕事。自主的に動き回る仕事。ひらめきや企画力を求められる仕事。新しい情報を集める仕事。移動が多く、よく身体を動かす仕事。

 <不得意なこと>
 文字や数字の細かな確認が多い仕事。長期的な計画を立て、じっくり進める仕事。自分から動くよりも待つことが多い仕事。

 さて、話をAさんに戻しましょう。ここからはAさんが、当クリニックでの診察時に話した、幼少期から現在に至るまでのご自身の話です。もしかしたら、これをお読みの読者の皆さんの中にも、「自分にも当てはまる」ことがあるかもしれません。

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