患者さん本人の気付きがきっかけで、診断が双極性障害(双極Ⅱ型障害)に変わったケース

毎年、同じ時期に「体調が悪い患者さん」が増える

 うつ状態を呈する、うつ病や双極Ⅱ型障害では、季節によって気分の変動が起こることは、実は昔からよく知られており、精神科医にとってはいわば常識です。なぜなら、うつ状態の患者さんをたくさん診ていると、毎年、同じ時期に「具合が悪い」という人が増えるからです。

 季節要因としてはまず、「急に気温が下がった・上がった」といった気温の変化があり、ほかに「ここのところ、ずっと雨続きだ」というような雨天日数の増減や、大きな台風の接近などによる「気圧配置の変化」の影響などがあります。

 診察室に入ってくる人が、同じように皆、一様に調子が良くない。そういう場合、私たち医者は「ああ、季節の影響だな」と感じます。

 この現象については、私自身も昔から感じていました。1年の中ではまず、1月下旬~2月になって、まだ寒さは続いているのですが、朝が少しずつ「早く明ける」と感じるようになり、その後、春めいた日が出てくる頃に「憂鬱」を訴える方が増える時期があります。いわば「冬から早春の時期」です。

「冬から早春」、「夏から秋」への移行期に患者さんが増加

 そしてもう一つは、夏から秋へ移り変わる時期で、夕暮れの時間がだんだん早くなる8月下旬から9月にかけてです。この頃には台風がいくつもやってきます。いわば昔の人が季節の移ろいの時期を表す言葉として言った「春先、秋口」の時期であり、気候や日照時間、温度や湿度などが変化するスピードが速い時期です。

 この時期は、ぜんそくやアレルギーなどの身体の病気が悪くなることでも知られていますが、実は気分も一緒に変動します。季節の変わり目だけでなく、気圧や温度、湿度など気候の変動に伴い起こる疾患を「気象病」などとも言いますが、その本体は未解明です。

 「気象病」の身近なところでは、夏の明るい日差しがいっぱいの晴天の毎日が続いていた頃には「気分も表情も明るかった人」が、季節が移ろい、秋風が吹くようになり、秋雨前線がやってきて雨が降り続くと「憂鬱な気分になって表情が暗くなる」という具合です。

 自分を取り巻く自然環境の変化に適応ができないため、それをストレスと感じて、憂鬱な気分が出てくることになるのだと思われます。ただ、この変化に関して医学的な説明は明確にはされていません。

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