患者さん本人の気付きがきっかけで、診断が双極性障害(双極Ⅱ型障害)に変わったケース

原因に心当たりがないのに、なぜか体調が悪くなる

 今回、ご紹介する患者さんの場合も、当初は「原因に心当たりはまったくないのに、なぜか体調が悪くなる」といった症状から始まりました。この患者さんは、現在50歳代の男性で、仮にAさんとします。当クリニックの初診は2010年。おっくう感、憂うつ感、寝つきの悪さ、中途覚醒(夜中に目が覚めてしまうこと)などの睡眠障害があったため来院されました。

 上記のような症状から、私は「うつ病」と診断し、まず、抗うつ剤を服用してもらいました。当時、Aさんは働き盛りのビジネスマンで、ストレス要因としては、職場での業務の多忙さと、業務の負荷が高かったことがありましたが、最も影響が大きかったのは、同居していた姑(=ご自身の母親)と妻の不仲でした。

 その後、Aさんは妻と離婚し、現在は、ご自身の母親と同居しており、会社にも復帰しています。

気分が高揚する軽躁が現れ、双極Ⅱ型障害が発覚

 復職後、1年を経過した頃に、いつになく気分が爽快で意欲が満ちてくる感覚を経験したと本人が話します。睡眠時間も3~4時間と短くなり、周囲からは普段と比べて、おしゃべりになっていると指摘されました。「後になって考えてみても、このような状態を経験するのは初めてだった」ということでしたが、これは双極Ⅱ型障害によく見られる症状である軽躁(そう)状態(軽い躁=気分が高揚している状態)と考えられました。

※双極性障害とは: 気分が高揚して活動が活発になる「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」が交互に現れる病気です。Ⅰ型とⅡ型があり、Ⅰ型は躁状態の時の程度が著しく激しく明らかに行き過ぎた行動が現れるため、すぐに周囲も気づきます。一方、Ⅱ型は躁(そう)状態が数日程度とごく短期間で、本人でさえ「いつもよりちょっと気分がいい」程度にしか感じないほどであるので本人も周囲も、気づくことが難しいのが特徴です。

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