適応障害(適応反応症)と診断され休職 医療リワークを利用して復職へ

一度は安定するも、また調子を崩す

 さて、休職したAさんに話を戻しましょう。当クリニックに転院したAさんには、週1回の診察時に「規則正しい生活をするように」という主治医の指導が始まりました。これによって、2か月ほど経過すると毎日おおよそ同じ時刻に起床し、同じ時刻に就寝するというリズムが回復するとともに、午前中の図書館通いと午後の運動を、毎日行うようになり、病状が安定すると、おっくう感は軽減し、うつによる身体症状もほぼ消失しました。

 生活リズムと症状の回復を確認して、Aさんは翌年2月より医療リワークに参加することになります。プログラムへの参加は、まず週2日から始まり、慣れてきたら参加日数を徐々に増やしていきます。Aさんは運動プログラムなど、自分が楽しめるプログラムに積極的に参加し、順調に進んでいました。

 しかし、自己分析のリポート(*2)を作ることを指示されてからAさんは調子を崩します。

*2 自己分析のリポートとは、自分が休職に至った経緯を振り返り、「なぜ、休職することになったのか」、その要因を「自分を取り巻く環境からの要因」と、「自己の内面に潜む要因」について考え、文章化する作業です。環境だけでなく、内的な要因も認識し、再休職を防ぐ対策を立てることが目的。

プログラムへの参加がきっかけで現れた変化

 Aさんが初回提出した自己分析では、職場の上司や先輩に対する不満が並ぶばかりで、自分のコミュニケーションパターンや性格傾向についての内省が浅い内容でした。その結果、主治医から自己分析の書き直しを数回にわたって指示され、繰り返し自己分析に取り組むことになります。

 当初は自己分析の課題を新たに出されるたびに、「なぜ、こんなことをやらなければならないのか」「もうやめたい」「会社を辞めてバンドを本業にしたい」などと訴え、体調不良が出現して休みがちになることもありましたが、同じ時期にプログラムに参加を始めたメンバーやスタッフからの励ましや支えを得て、自己分析に粘り強く取組むようになっていきました。

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