漫画家・カレー沢薫さんにお尋ねします、「発達障害の診断」をどう受け止めましたか?

発達障害とわかり、できないことを受け入れ自己肯定感が増した

Dr.五十嵐 カレー沢さん、本題(いくつかの困りごと)に入る前に、まず、「ご自身が発達障害であるという診断を聞いて、ご自身にどんな変化があったか」について、お聞かせください。

カレー沢さん そうですね。発達障害であるとわかって、「自分ができないこと」を、受け入れることができるようになりました。それまでは、自分の「できないこと、不得意なこと」に対して、「頑張ればできるようになる」と思っていました。でも「良くなるにしても、得意になることはないのだ」とわかって、ハードルが下がったというか…。

 以前は、理想と現実とがかけ離れ過ぎていたので悩むことが多かったのですが、診断を受けてからはその差が少なくなり、気持ちがラクになり、自己肯定感が増えました。工夫をすれば良くなるということもわかって、「やろうと思えばできる」のだと。でも、その一方で「必要になったら、その時にやればいいや」みたいなところも出てきて…。良くなる一方ではなく、上がったり下がったりの繰り返しになっていますが、それでも「やっても無駄」という感じではありません。

漫画にすることで新たな発見が多かった

Dr.五十嵐 それで、そのプロセスを漫画のワンシーン、ワンシーンに描かれて、単行本としても2冊目になったわけですよね。昨年にも一度、この日経グッデイで対談させていただき、その際には「漫画にすることで、新たな発見が多かった」とお話しされていましたが、それは今も続いていますか?

カレー沢さん はい。漫画を読んでいる読者の皆さんからも「はじめて、こういうことが発達障害の可能性を表しているとわかった」とか、「自分だけのことかと思っていた」というような反応や、「同じことで悩んでいる人がいること」「同じような行動を取ってしまう人が他にもいるのだということに気づいた」といった感想が多く、悩んでいる人はたくさんいるのだと知りました。

 すでに診断を受けている方もいましたし、漫画を読んで「今まで考えてもいなかったけれど、もしかして自分もそうなんじゃないかと気づいた」という人もいました。

工夫次第でできるようになるが、それをどう定着させていくか

カレー沢さん 私自身は、今までも、人とうまくいかないことがあるのは自分でもわかっていたのですが、原因がわからず、理由がはっきりしていなかったんです。

 ただ、私は話をするのが苦手なので、そういう問題なのかと思っていました。でも、他の人から客観的に見ると、自分の行動にもやはり問題があったということがわかってきて、逆の立場だったら、ちょっと「あれ?」と思うだろうな、ということもあるのに気づきました。

 そして、発達障害であるという診断を受けて、リハビリプログラム(マンスリー・コムズのこと)にも参加したことで「頑張っても、苦手なことは、できるようにはならないけれども、工夫をすれば良くなる」ということもわかって、「こうすればできる」「やろうと思えばできる」ということを知りました。

 その一方で、やろうと思えばできるのだから、「必要になったら、その時にやればいいや」みたいな「怠け」も出てきて。油断をすると、工夫などをやめてしまって、元のパターンに戻るということも多く、良くなる一方ではなく、また悪くなり…。

 そうなると、今度は「これではダメだ」と、もう一回、工夫してやってみよう…と。上がったり下がったりの繰り返しになっています。それでも「やっても無駄」となることはありません。

 やっぱり、「やれば多少はできる」ということがわかったので、今後は、それをどう定着させていくかが課題だとは思っています。

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