「なおりはしないが、ましになる」、カレー沢薫さんと発達障害について語る

Dr.五十嵐 最後にもう一つ、質問いいですか。ごく最近、受賞されたそうで。どういう作品で、どんな賞をもらわれたんですか。

カレー沢さん 孤独死と終活をテーマにした『ひとりでしにたい』というマンガで、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました(編集部注:2021年)。

 こういうマンガを描こうと思ったのも、やっぱり私自身が、ちょっとコミュニケーション能力に難があって。最後に孤独死するんじゃないかなという不安がすごくあり、そのテーマになりました。

Dr.五十嵐 文化庁の賞だったんですか。受賞された感想としては。

カレー沢さん うれしいです。

Dr.五十嵐 『なおりはしないが、ましになる』の連載は今後も続くのですか?

カレー沢さん 続けたいと思っています。

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 メディカルケア大手町・虎ノ門の「成人の発達障害 専門外来」について 

 当院で「成人の発達障害」の専門外来を始めたのは、2007年、2008年頃に「うつ」のリワークプログラムでデイケアに参加する人たちの中に、結構たくさん発達障害の人がいるなと感じたことがきっかけでした。

 その当時、発達障害の専門外来はまだまだ数としては少なく、大学病院にはありましたが、そちらはとても重症な人たちが対象で、当院から大学病院に紹介しても、先方の診断基準では「発達障害ではない」とされて戻されてしまうという具合でした。

 しかし、発達障害の傾向は非常に薄いけれども、困りごとはたくさん持っているわけです。小さい頃からの違和感もある。その人たちをきちんと診断するには、やはり検査を行わなければいけない。問診もしっかり行う必要がある。ということで、当院で発達障害の専門外来を始めたところ、たくさんの患者さんたちが来院しました。

 それで、外来に来て発達障害と診断された人向けに、治療をやっていく場として「マンスリーコムズ」というプログラムを作りました。1カ月に1度、毎回50人から多いときは70人から80人程が通ってきます。

自分の悩みやつらさを話せる場を提供

 1回3時間ほどのプログラムの内容としては、半分は発達障害について学ぶ時間。残り半分はグループに分かれてディスカッションしてもらっています。そこで同じ状況の人と話し合えるわけです。

 発達障害の人が自分の困りごとや、それに向き合うつらさなどを気兼ねなく話せる場は決して多くありません。家族にさえ、打ち明けられない人も多いため、せめて、同じ障害を持つ者同士でいるときは「自分にはこういう症状があって」と、日ごろの悩みや自分なりの対処方法の工夫などを話せる場があればと考えて提供しています。メディカルケア虎ノ門で1年に10回実施しています。

 このマンスリーコムズに参加するにはまず、メディカルケア大手町の「成人の発達障害外来」を受診してもらい、発達障害の検査をして診断を受けてからとなります。診断を受けなければプログラムへの参加はできません。詳しくは当院のWebサイトをご確認ください。

 また、各都道府県にある「発達障害者支援センター」では病院など地域の支援機関に関する相談等を行っています。

●発達障害者支援センター(各都道府県の所在地は以下のリンクから)
http://www.rehab.go.jp/ddis/action/work/


©カレー沢薫/小学館
カレー沢薫さんが自身の発達障害をテーマに描いた『なおりはしないが、ましになる』第1巻、2021年3月発売。税込1000円(小学館)

 メディカルケア虎ノ門・大手町のWebサイト「成人の発達障害 Monthly Com’s(マンスリーコムズ)」紹介ページに一部試し読みができるリンクがあります。


©カレー沢薫/小学館


(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)

出典:「日経Gooday」2021年5月11日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/042800008/
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