「なおりはしないが、ましになる」、カレー沢薫さんと発達障害について語る

Dr.五十嵐 「なおまし」というタイトルは、非常に核心をついていると思います。

 残念ながら、発達障害が「治る」ことはありません。それでも、自分の困りごとや苦手なことを知るとともに、得意なことも理解し、困りごとへの対処方法を学ぶことで、学ぶ以前よりは、ずっといろいろなことが改善します。

 カレー沢さんは私のクリニックに通って、発達障害の診断のための検査を受け、診断もさせていただいて、フォローアップのために何回も通院していただきました。薬も出しましたけれども、薬の効果も一定程度だったので、最終的には薬を使わないということで現在に至っていますね。

 そして、当院には「マンスリーコムズ」という、コミュニケーションを改善するリハビリテーションプログラムがあり、これにも何回か参加していただきました。

解説:マンスリーコムズとは

 メディカルケア大手町には「大人の発達障害」の専門外来があり、発達障害の検査を実施して診断を行っています。その専門外来で大人の発達障害と診断された人を対象に、2014年からコミュニケーションを改善する場として月1回土曜日に、マンスリーコムズというリハビリテーションプログラムを実施しています。

【プログラムの内容は】
・発達障害の特徴に関する学習
・自己の特性に対する理解を深めるワーク
・コミュニケーション上の工夫、生活上の工夫に関する意見交換
・日常生活における困りごとや対処法に関する共有と意見交換
というものです。

Dr.五十嵐 マンスリーコムズに参加してみて、特に印象に残っていることはどんなことですか?

カレー沢さん コムズに参加して思ったのは「いろんな人がいるな」ということでした。私と似たような性格の人が集まるのかなと思っていたんですが、すごく社交的な感じの人もいれば、おとなしい人もいて。

 発達障害って「こういう特徴がある」という風に、ズラっと並べられることが多いので、それで発達障害というテンプレートみたいな感じがあるのかと思っていたんですけれども、普通の人たちと全然変わらない、いろんな人がいると感じました。

自分の障害について話せる場があることに意味がある

カレー沢さん それで、コムズの中では発達障害について話す機会があって。もちろん、コムズのプログラム内容にはアドバイスなどがあり、学べることも多いんですけれども。自分の発達障害について話せる場があるということにすごく意味があるな、と思っていました。そういう場所はほかにありませんから。

 友達や家族にも、自分の発達障害については話しにくいし、それに、その話をしたことで私に対するイメージが変わってしまうのではないかという、強い恐怖がいまだにあるので。

 だから、コムズ以外では、自分の発達障害について話せる場はなく、「こういうことがあった」とか「こんなことで困った」と、遠慮なく話せる場があるというのはすごく大きいと思っています。


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