うつがどんなもので、どう向き合うか。「ツレがうつになりまして。」に教わった

うつになる要因の一つ、ストレスは自分の時間でしか解消できない

 2011年に公開された映画『ツレがうつになりまして。』は、漫画家の細川貂々(てんてん)さんのご主人が、勤務先の大規模なリストラによって従業員が大幅に削減され、本人はリストラを免れたものの、そのシワ寄せによる過労から「うつ」を発症。その後の日々を、妻の貂々さんが綴った漫画を原作とする映画です。

 宮崎あおい、堺雅人が共演し、夫の“ツレ”が「うつ」と向き合う日々が描かれています。

うつにならないためには「自分の時間の使い方」が大切

 うつとはどういう病気なのか。うつにならないためには、またもし、うつになってしまったら、どうしたらいいのか。メディカルケア虎ノ門院長の五十嵐良雄先生は、

・うつの要因の一つは「ストレス」
・自分自身の時間を仕事などに使って溜まってくるもの
・溜まったストレスは「自分の時間でしか解消できない」
・うつにならないためには「自分の時間の使い方」が大切

と言います。

 また、うつの人に「がんばれ」と言ってはいけないとよく言いますが、実は「がんばれ」と声をかけてはいけないのではなく、励ましてもいい時期、励ましてはいけない時期があるそうです。

 うつとどう向き合えばいいのか。映画「ツレがうつになりまして」が、その一例を示してくれています。

<この記事に掲載されている主な内容>
・うつになってしまったら、何をすればよいのだろう?
・厚生労働省のデータによれば、2000年前後からうつは増加傾向
・うつの要因の一つはストレス
・「頑張れと言ってはいけない」は本当?

 ここでは2011年に当クリニックの五十嵐良雄医師が取材を受けた記事を、シネマトゥデイの許可を得て掲載しています。

うつ病は誰でもなる病気? 宮崎あおい&堺雅人共演の映画
『ツレうつ』に学ぶ 昨今のうつ病の傾向と対策

シネマトゥデイ 2011年9月12日公開記事

 メディカルケア虎ノ門院長・五十嵐良雄先生が、宮崎あおい、堺雅人共演の映画『ツレがうつになりまして。』のストーリーを基に、昨今のうつ病の傾向と対策を語った。映画は、宮崎演じる漫画家の“ハルさん”こと晴子と、ある日突然うつ病と診断された夫の“ツレ”幹男が、病と向き合いながら生きていく姿を描いた作品。

 勤めていた会社が大規模なリストラを行ったことで激務に追われることとなり、徐々に体の不調を訴えるようになっていったツレ。うつ病にならないために、またうつ病になってしまった場合に、わたしたちは何をすればよいのだろうか? 五十嵐院長が教えてくれた。

 風邪のように誰でもなりうる病気だといううつ病。厚生労働省のデータによると、2000年前後、バブルが崩壊したころからうつ病は増加傾向にあるという。また昨今は、20代後半、30代の若い世代に、外来で治療できる程度の軽い症状のうつ病が増えているそう。

 本作のツレもこの年代。しかし、自分自身を責めるのではなく、自分をとりまく環境に問題があると考えてしまうタイプが多いのも、昨今のうつ病の傾向というが、ツレはどちらかというと、自分自身を責めるタイプ。

 堺は、ツレを演じるにあたり、「(うつ病には)いろいろな症状があって、うつ病という言葉一つでは括ることができない、よくわかっていない病気だということがわかったことは非常に大きかったですね」と語っているが、それがうつ病の正体だ。

 うつ病が起こる要因の一つは、ストレス。「ストレスは自分自身の時間を仕事などに使ってたまってくるもの」と言う五十嵐院長は、うつ病を引き起こすストレスは、「自分の時間(1日24時間を睡眠、仕事、食事、通勤などで割り振った後に残った時間)でしか解消できない」とし、うつ病にならないためには、「自分の時間の使い方が大切」とアドバイスする。

 しかしもしうつ病になってしまったら、わたしたちは何をすればよいのだろうか?

 よく「うつ病の人には『がんばれ』と言ってはいけない」と言うが、五十嵐院長は、これには少し語弊があると話す。うつ病の人に常に「がんばれ」と声を掛けてはいけないわけではなく、励ましてもいい時期、励ましてはいけない時期があるという。

 「うつ病は、休養が必要な時期、回復していく時期などいくつかの段階に分けられます。まだ症状が残っている時期に『がんばれ』は逆効果ですが、回復して、(仕事などに)復帰していこうという時期には、がんばらなければならない時期ですから『がんばれ』と言ってあげることも必要です。状況を見ながら励ます、タイミングが大切です」。

 人によって症状の異なるうつ病という病は、そのときどき、向き合っていかなければいけない病気、ということだ。

 バリバリのサラリーマンから主夫になったツレに、時にイライラしてしまったり、失敗を重ねながら2人で一歩一歩前へと進んでいく姿が、ほんわかと温かく描かれた本作。

 堺は、ツレを演じるにあたり、うつ病に関する本を読み、「僕もちゃんと闘いたい」とうつ病と向き合った。うつ病とは何なのか、実際に自分が、周りの人がうつ病になってしまったら、どう向き合えばいいのか、『ツレがうつになりまして。』は、うつ病との一つの付き合い方を、提示している。(編集部・島村幸恵)

映画『ツレがうつになりまして。』は2011年10月8日公開
※宮崎あおいの「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります。

出典:シネマトゥデイ 2011年9月12日公開記事
うつ病は誰でもなる病気?
宮崎あおい&堺雅人共演の映画『ツレうつ』に学ぶ昨今のうつ病の傾向と対策
https://www.cinematoday.jp/news/N0035250
シネマトゥデイの了承を得て掲載しています

 

※この記事は2011年の記事公開当時のものです。


※この「ツレがうつになりまして」の続刊を含めた漫画3冊の書影は、2011年にシネマトゥデイに掲載された当該記事をこちらに転載させていただくに当たって、当クリニックが出版元の幻冬舎文庫の許可を得て掲載しているものです。

(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)

プライバシーポリシー
© All Rights Reserved. メディカルケア大手町・虎ノ門