教えて、カレー沢薫さん!大人の発達障害由来の困りごとは、なぜ起こる?

【ADHD】「衝動性」からくる困りごとは4つある

Dr.五十嵐 それでは、ここからはADHD(注意欠如・多動性障害)の特性である「衝動性」の主な内容、以下の4つの困りごとについてお聞きします。

1.思ったことをすぐに口に出してしまう

2.頭の中がいつも騒がしい/脳の落ち着きがない

3.お金の使い方が激しい

4.ネガティブに考えてしまう

 まずはこちらから。

「衝動性」からくる困りごと
(1)思ったことをすぐに口に出してしまう

 後の影響などはあまりよく考えずに口に出してしまうことはありますか?

カレー沢さん コロナのために、人と話す機会が減っているということもあり、また、私はそれほど衝動は口には出ないので、今は「思ったことをすぐに口にする」ということはあまりありません。

Dr.五十嵐 そうですか。瞬間湯沸かし器のように、衝動的にカッとしやすい人もいますが。

カレー沢さん カッとなることは少なくはないですが、それを言葉にすることはあまりありません。

Dr.五十嵐 衝動性はありますが、感情的な言葉として出すことはないので、怒りっぽくなりカッとしやすいというところはないのですね。

「衝動性」からくる困りごと
(2)頭の中がいつも騒がしい/脳の落ち着きがない

Dr.五十嵐 いろいろな患者さんに尋ねるのですが、「カッとする」という時に、皆さん、「頭の中がいつも騒がしい」と言います。「騒がしい」ので、いろいろなことが整理できず、ミスが多くなると。

 カレー沢さんも、頭の中がいつも忙しいというマンガを描いていますが、やはり、そういうことが多いのでしょうか?


©カレー沢薫/小学館
ちょっとしたことも頭の中で大きくしてしまうので、頭の中がいつも忙しい

カレー沢さん はい、「頭の中がいつも忙しい」というのはあります。それは、ちょっとしたことを、頭の中で一瞬にして大きくしてしまうせいだと思います。本当に、ちょっとした一言を頭の中で何百倍にも膨らませて、ものすごく怒ってしまうということがあります。

 でも、私はそれを外に出すということはあまりないので、人に対して怒ることはほとんどありませんが、ひとりでイライラすることは多いです。

Dr.五十嵐 同じように「頭の中がいつも忙しい」ということを表現する患者さんは結構います。頭の中でいろんな人間が話しているとか、いつも頭の中で音楽が聞こえているといったことです。これも衝動性と関係があるのだろうと思いますが、いかがでしょうか?

カレー沢さん そうですね。ささいなことでカッとなって、イライラして何かをしてしまうということは結構あります。

「衝動性」からくる困りごと
(3)お金の使い方が激しい

Dr.五十嵐 次に「お金の使い方」ですが、衝動的に買ってしまうために「使い方が激しい」ということはありますか? これはコントロールが難しいのでしょうか?

カレー沢さん そうですね、私も「欲しい」となったら買ってしまいますし、びっくりするようなお金を使ってしまったりすることもあります。

 もちろん、お金がないのに使ってしまうということはありませんが、使い過ぎることはあります。

Dr.五十嵐 その場合、「こだわり」というのも関係がありますか?

カレー沢さん そうですね、「コレを買うならコッチも一緒に買わなければダメだ」というような感覚は結構ありますね。

Dr.五十嵐 その背景に「脳の落ち着きのなさ」が関係しているかどうかは、わからないのでしょうか?

カレー沢さん はい。でも、結構昔から、お金の管理が苦手で衝動買いが多いと、親にずっと言われてきたので、そういうところはあるのだろうと思います。とはいえ、困るほど使ったことはないので、それほど、ひどくはないようです。


©カレー沢薫/小学館
お金の管理が苦手。衝動買い&爆買いしてしまうことも

「衝動性」からくる困りごと
(4)ネガティブに考えてしまう

Dr.五十嵐 4つ目は「ネガティブに考えてしまう」ということですが、何かを見たり、聞いたりしただけでネガティブなことを考えるというのは「うつ」の人でもあることですが、これは、かなり想像がふくらむのでしょうか?

カレー沢さん そうですね、実際に何かを言われたわけでもないのに、相手の表情などの反応を見ただけで、「もしかしたら、こう思われたのではないか」と考え出すと、それがすごく大きくなってしまうことはあります。

Dr.五十嵐 一瞬でそういう考えに入ってしまうのですか?

カレー沢さん はい。いったん、そう考え出すと、なかなか自分では止められず。気が付いたら、いらないことを言ってしまいます。そういう時は、後になって「あんなことを言わなければ良かった」と、すごく落ち込んでしまうこともあります。

Dr.五十嵐 なるほど、瞬間的にカッとするのと同じように、そういう思考にすっと入ってしまうということですね。

 さて、ここまで主に「ADHD(注意欠如・多動性障害)」の不注意、衝動性という障害由来の困りごとについて、カレー沢さんにお尋ねしてきました。ここでお伝えした、「不注意」「衝動性」はADHDの典型的な症状です。実は、カレー沢さんはこの「不注意」と「衝動性」の2つの特性を持っているため、どちらか1つだけの特性による困りごとだけでなく、「不注意」と「衝動性」の両方が掛け合わさって現れる困りごともあります。

 次回はこの「不注意」と「衝動性」の2つの特性の「掛け合わせ」による困りごとと、ASD(自閉症スペクトラム障害)の困りごとについて取り上げます。

今回ご協力を頂いたのは…

カレー沢薫(かれーざわ かおる)さん
マンガ家・コラムニスト

2009年、初めての投稿作『無題』が華麗に落選。しかし、恐ろしいほどの強運によりその作品で連載デビューを勝ち取り、OL兼業マンガ家になる。18年、長く勤めた会社を退職し、専業マンガ家に。強烈な物言いが受けてコラムニストとしても活躍。現在、10本以上の連載を持つ。21年、第24回文化庁メディア芸術祭にて『ひとりでしにたい』(モーニングKC)が「マンガ部門」優秀賞を受賞。22年7月、自身の発達障害の日々を描いた『なおりはしないが、ましになる』第2巻を発刊。無類の猫好き、AB型、女性。

(まとめ:福井 弘枝=フリーライター)

出典:「日経Gooday」2023年1月31日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/011300022/
日経BPの了承を得て掲載しています

プライバシーポリシー
© All Rights Reserved. メディカルケア大手町・虎ノ門