また、うつ休職?「大人の発達障害」の可能性も

●自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合

<得意な仕事>
• 規則的、計画的に行う仕事
• 同じ作業を反復する仕事
• 難解な専門知識を必要とする仕事
• 膨大な情報量を扱う仕事
• 製品を管理、整理する仕事

<不得意な仕事>
• 臨機応変に計画を変更する仕事
• 顧客ごとに個別対応を求められる仕事
• 対話中心で形にならない要素が多い仕事

●注意欠如・多動性障害(ADHD)の場合

<得意な仕事>
• 臨機応変に手早く作業する仕事
• 自主的に動き回る仕事
• ひらめきや企画力を求められる仕事
• 新しい情報を求める仕事
• 移動が多く、身体をよく動かす仕事

<不得意な仕事>
• 文字や数字の細かい確認が多い仕事
• 長期的な計画を立て、じっくり進める仕事
• 自分から動くよりも待つことが多い仕事  

 誰にでも得意・不得意なことがありますが、発達障害の人の場合は、不得意な仕事が目立ち、その改善が苦手です。また、人事異動や転勤、昇進などをキッカケとしてトラブルが起こる場合が多いのも特徴です。つまり、自分の障害特性に合っていた仕事から、苦手な仕事の職場に異動になったことによって、トラブルが増え体調を崩すと言えます。

 例えば、コミュニケーションの苦手なASDの人が、個人作業の多い仕事から、打ち合わせが多い部署に異動になれば、トラブルが発生しやすくなるという具合です。

得意なことを生かせる仕事・職場で成果を発揮

 障害の特性が仕事に合っていない場合には問題が起こりやすいため、原則的に障害の特性に合った仕事をすることが望ましいといえます。不得意なことがある一方で、突出して得意なことがあり、その得意なことを生かす仕事なら、十分成果を挙げられるでしょう。

 では、例えば、これをお読みのご本人や、あなたの周囲の人が、うつで休職を繰り返している場合、「もしかしたら、大人の発達障害なのかもしれない」と気づいた時にはどうしたらよいでしょう。

 本人の困りごとと、職場側の困りごとを整理すること。そして本人が、自分の得意・不得意なことを知ることが大切です。そのためには、まず本人が本当に発達障害なのか医療機関で検査を受けることです。

 発達障害は医学的には精神疾患のカテゴリーで診療・研究されています。近隣に発達障害の診療を行う精神科医がいれば、そちらを選びます。受診先が見つからない場合は大学病院や総合病院を受診して、精神科を案内してもらいましょう。

 病院が見つからない場合や、困りごと、働き方などについて相談したい場合はお住まいの地域の公的機関に相談してみてください。その上で対策を身につけましょう。


発達障害の人が長く働き続けるためにできること』五十嵐良雄(監修)

 

< 相 談 先 >
●地域障害者職業センター
 障害者職業カウンセラーが、仕事でお困りの方からの相談を受け付けています。費用は無料。障害者手帳を取得していなくても相談できます。本人が希望しない場合、勤務先への連絡は行ないません。まずは電話で相談の希望を伝え、必要に応じて定期的な相談を実施しています

●発達障害者支援センター
 各都道府県にある「発達障害者支援センター」では就労支援や、病院などの地域の支援機関に関する相談等を行っています

  【発達障害の人が働き続けるためのステップ】

Step1 発達障害を知る
 どのような種類の発達障害であり、特性について自分で知ることから始まります。発達障害についての書籍などを読むことでも発達障害の特徴を知ることができます。

Step2 自分の特性を知る
 同じ障害でも、特性の現れ方は一人ひとり個々に違います。複数の発達障害が併存していることも、聴覚や触覚などの感覚面に特性がある人もいます。自分自身の特性を理解しましょう。

Step3 対策を身につける
 自分の特性を理解したら、それが生活上の困難につながらないように対策を考え、身に付けましょう。特性を治そうとするのではなく、特性があっても不便がないように、確認作業を増やしたり、周囲にサポートを求めたりします。

(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)

出典:「日経Gooday」2021年4月6日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/033000007/
日経BPの了承を得て掲載しています

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