また、うつ休職?「大人の発達障害」の可能性も

大人の発達障害の特徴とは

 なぜ大人になって発覚するのかというと、成長して社会人になって就職すると、仕事として苦手なことにも取り組まなければならなくなるためです。

 「大人の発達障害」は大きく分けると2つあり、その特徴は以下の通りです。

●人とうまくコミュニケーションが取れず、孤立しがち
 ASD(自閉症スペクトラム障害)

 草食系、おとなしい方である。喜怒哀楽を表にあまり出さない。場の空気を読むのが苦手。目上の人に失礼な態度をとってしまうなど、人とコミュニケーションがうまくとれないことが多く、職場で人間関係を築くのがあまり得意ではない。

 他者の気持ちを想像したり、他者の視点に立って考えたりすることが苦手。集中力は高いが、他のところにまったく注意がいかなくなることがある。視覚、聴覚などの感覚が過敏。物事へのこだわりが強く、興味が偏っていることもある。働き方を柔軟に変えるのが難しい。これからのことを予測して予定を立てることが苦手。

●落ち着きがなく、不注意が多い。片付けが苦手
 ADHD(注意欠如・多動性障害)

 忘れ物や失くし物が多い。2つの異なることを同時に行うのが苦手。注意が集中せず、部屋が片付けられない。不注意による仕事上のミスがあり、気を付けていてもミスが減りにくい。幼い時に目立った落ち着きのなさ(多動性)や、思い立ったことをすぐにやりたくなる(衝動性)ことは大人では目立たなくなっているものの、時に現れ、常に動き回るなどせわしないことがある。親しみやすいところがあるが、カッとなりやすい。  

 このように大きく2つに分かれるものの、大人になるまで気づかれないほど軽度の「大人の発達障害」は、これらの両方の傾向を持っていることが多いのも特徴です。両方の傾向を持っているという前提で「どちらの傾向が目立つか」と考えます。

うつ病と診断されて休職することもある

 そして、このような特性を持っていることから、職場で「上司の指示がうまく理解できない」「仕事のスピードが遅い」「段取りが組めない」といったことに直面し、トラブルになって叱責されたり、うまくいかずにストレスを感じることが増えると、憂うつになる、眠れなくなる、食欲不振になるといった「うつの症状」が表れて、うつ病と診断されて休職する場合もあります。

 また、システムエンジニアなど自分の得意な分野で、独りでコツコツと仕事をして成果を挙げてきた人が、歳を重ねて経験を積み、出世してチームリーダーなどになった場合、苦手な「周囲とのコミュニケーション」場面に直面することになります。

 独りで取り組む仕事なら、同僚や部下とのコミュニケーションで苦労することはありませんが、チームリーダーとなれば、当然、チームのメンバーとの人間関係が生じます。そして、リーダーには「部下の気持ちを推し量る」「チームとして仕事をうまく進めるために周囲に気配りする」といったことが必要ですが、発達障害の人はこうしたことが苦手なため、うまく対応できないことにストレスを感じ、うつの症状が表れて休職してしまうということもあります。

本当の原因は発達障害

 一見、職場環境に適応できずにうつ症状などが出ているように見えることから、「適応障害」と診断されたりしますが、うつの症状は二次的なもので、本当の原因は本人の発達障害にあります。

 休職して職場を離れ、服薬治療などを行えば、うつ症状は改善します。しかし、発達障害が消えることはありません。そのため、うつ症状が改善した時点で復職しても、同じ経緯でストレスにさらされ、やがて、うつが再燃するという負のスパイラルに陥り、休職を繰り返すことになりやすいのです。

 また「大人の発達障害」は、子供の頃に症状が見過ごされてきたほど、障害があってもその程度は軽い人が多いのですが、本人や周囲の人の困りごとは決して小さくありません。

人格的な異常ではなく一定の割合で存在する

 さて、ここで一つ、明確にしておきたいのは、大人の発達障害は「性格のせいだ」「やる気がないからだ」と、その人の人格的な問題としてとらえられがちですが、「全くそうではない」ということです。

 発達障害的な要素は程度の差があるだけで、実は誰もが多かれ少なかれ持っているものです。仮に、当てはまることが多い場合でも、それはその人の性格や人格に起因するものではありません。

 また、発達障害の人は不得意なことがある一方で、「人よりも得意なこと」や「優れた能力」が突出するのも特徴です。

 例えば、「Aさんは会社の自分のデスク周りの片づけはまったくできず荒れ放題だけれど、文章の構成力、執筆の表現力においては大変優れている」「Bさんは興味のない仕事は苦手だが、何か特定のことにこだわると、集中力を維持したまま長時間向き合い続けることができ、優れた結果を出せる」といった具合です。

 また、障害と言っても表れ方は千差万別であり、学歴が高く、人気企業に就職している人もいます。身近なところでは医師や弁護士などに発達障害やその傾向を持つ人が多く、著名人ではビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどグローバル企業の創業者や、歴史上の人物ではアインシュタインやモーツァルトにも発達障害の傾向があったことが知られています。

 得意なことを生かしながら、不得意なことをどう乗り越えていくかと、とらえるのがよいでしょう。

 ここでそれぞれの得意なこと、不得意なことを整理して挙げておきます。

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