漫画家・カレー沢さんに聞く 「大人の発達障害」では複数の特性が重なって現れる!?

正しくない診断で、誤った薬を処方しているケースも

Dr.五十嵐 そして最後にお話ししたいのは「大人の発達障害」を正しく診断することは大変難しいということ、そしてだからこそ、誤った診断によって、誤った薬が処方されているケースがあるかもしれません。

 さきほど述べたように、大人になって診断される発達障害の方は、ADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム障害)の、どちらか一方だけでなく、両方の要素を持つことが多いのですが、どちらの傾向も典型的ではなく薄いものの、ADHDASDの混在する割合は人によってさまざまで、そのために困りごとも人によって内容が異なります。

 つまり、困りごとを聞いて簡単な検査をするだけでは「大人の発達障害の診断」を正しく行うことはできません。当クリニックでは診断のために複数の検査を行い、最後にご本人とご家族からの聞き取りを行うので最低でも3回通院してもらい、そうしてようやく診断に至ります。

 ところが、近年では簡単なチェックリストだけで「ASD」「ADHD」という診断を行っているところもあります。その場合、正確ではない診断に基づいて薬が処方される可能性が高くなります。

 困りごとの原因となる発達障害の内容は、人によってさまざまであり、現れる困りごとにもバラつきがあります。当然ですが、正しい診断ができていなければ、薬の処方を間違えることもあります。また、不要な薬が処方されていることがあります。

 発達障害は薬だけで治るものではありません。障害について知識を持ち、自分の得手不得手なところを知って、どのように対処していくかを考えることが大事です。

(まとめ:福井 弘枝=フリーライター/図版制作:増田 真一)

カレー沢薫(かれーざわ かおる)さん
マンガ家・コラムニスト

2009年、初めての投稿作『無題』が華麗に落選。しかし、恐ろしいほどの強運によりその作品で連載デビューを勝ち取り、OL兼業マンガ家になる。18年、長く勤めた会社を退職し、専業マンガ家に。強烈な物言いが受けてコラムニストとしても活躍。現在、10本以上の連載を持つ。21年、第24回文化庁メディア芸術祭にて『ひとりでしにたい』(モーニングKC)が「マンガ部門」優秀賞を受賞。22年7月、自身の発達障害の日々を描いた『なおりはしないが、ましになる』第2巻を発刊。無類の猫好き、AB型、女性。

五十嵐良雄(いがらし よしお)さん
東京リワーク研究所所長。精神科医・医学博士。医療法人社団雄仁会理事長

1976年、北海道大学医学部卒業。埼玉医科大学助手、秩父中央病院院長などを経て、2003年メディカルケア虎ノ門開設。2004年、医療法人社団雄仁会理事長就任。2008年、うつ病リワーク研究会発足、代表世話人に就任。2018年、一般社団法人日本うつ病リワーク協会理事長に就任。現在、メディカルケア大手町・メディカルケア虎ノ門で診療にあたる。

出典:「日経Gooday」2023年3月30日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/031700024/
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