ストレスから自分を守るためにはまず「敵」を知ること

あなたは「どういうこと」にストレスを感じるか、調べよう

 まず、自分がどんなことにストレスを感じるかを整理して、自分にとっての「ストレッサー」(ストレスの原因)が何であるかを確認します。案外、自分のことは気づいていないことが多く、知らないものなのです。

 具体的に確認してみましょう。下表は仕事の場面で、どういう状況が自分にストレス反応を引き起こすかを確認するためのワークシートです。リワークプログラムで実際に使用しているものです。

 

(1)上の表にある13個の各項目について、自分が「ストレスに感じる」場合は目盛りの左側「-(マイナス)」方向に、そのストレスの強さが3段階のいずれに該当するかを判断してチェックを入れます。

(2)強烈にストレスを感じる場合は「-(マイナス)3」、ごく軽いストレスの場合は「-(マイナス)1」という具合です。

(3)逆に「やる気が出る」「前向きに気持ちになれる」という場合は、目盛りの右側の「+(プラス)方向」に、その気持ちの強さが3段階のいずれに該当するか判断してチェックを入れます。

 これによって、「どんなことにストレスを強く感じるか」という自分の特徴がわかります。(出典:『うつのリワークプログラム』日経BP社 2018.P115より)

 「仕事・職場のストレッサー13分類」というこの表(米国国立職業安全保健研究所[NIOSH]の職業性ストレスモデルを元にメディカルケア虎ノ門リワークプログラムにて一部改変)には、「量的な労働負荷」や「労働負荷の変動」、「認知的要求」、「グループ内の対人葛藤」といった、仕事や職場でストレスの原因となる主な項目がタテに列記されています。

 表の内容を読んでみてください。項目は13個ありますが、いずれも読んでいるだけでストレスフルな印象です。それぞれ、これらが自分にどう影響するかをチェックしていきます。

 例えば、「量的な労働負荷:たくさんの仕事があり処理しきれない」という状況が自分に悪い影響を与えると思ったら、その度合いを「マイナス1」から「マイナス3」の3段階で評価します。

 逆に、自分に良い影響を与えるなら、「プラス1」から「プラス3」の3段階で評価します。何も影響を与えない場合は「ゼロ」にチェックという具合です。

 ここでいう「悪い影響」とは、不安や恐れなどを感じるかどうか。「良い影響」は逆にヤル気が出る、前向きになれるといった場合を指します。ここに挙げられている13個の項目について自分がどう感じるかを確認することで、「自分が何にストレスを感じやすいのか」がわかる作業(個人ワーク)です。

自分の特徴を知ることが、対策を考えるための初めの一歩

 リワークプログラムでは前ページの個人ワークが終わると、5、6人ずつのグループに分かれてグループでのディスカッションを行います。各人が、何にどういう評価を付けたかを話します。

 先ほどの表の項目は、どれも悪い影響しか与えない(つまり、ストレスになる)ような内容ばかりのように思えますが、実は、その影響を感じる対象やその程度は人によって違います。

 ある人が「マイナス3」と悪い影響を強く感じている項目について、別の人は「マイナス1」と、それほどでもない。リワークプログラムでは、グループで自分の選択した内容を話し合うことで、そうした個人差や自分の特徴に気づきます。

 「私は『量的な労働負荷』がマイナス3です。組織改編があってから業務が増えて、残業がどっと増えて、これが体調不良のキッカケになりました」

 「ああ、ありますよね、そういうこと。私の場合は『役割の曖昧さ:自分の権限がはっきりしない』が、最大のストレスでした。客先で『こうしてほしい』と言われても、即答できない。細かいことでも、いちいち上司の確認を取っていたら客の機嫌が悪くなった」など、それぞれが自分の体験を話すことで、自分以外の他の人がどんなことにストレスを感じるかを知ります。

どういうことに、どの程度、ストレスと感じるかは人によって違う

 「人によって、ストレスに感じることは違う」「同じストレッサーでも、人によってストレスに感じる程度が違う」といったことにも気づきます。

 13種類の項目は、一つひとつが独立して起こるばかりではありません。複数の要素が重なることもあります。また、プラス評価の要素とマイナス評価の要素が組み合わさるとマイナス評価がやわらぐこともあり、相互の関連もあります。

 リワークプログラムでは、同じストレッサーに遭遇した時の対処法を考えるために、仕事の場面で自分がどういう状況にストレスを感じていたかを思い出し、漏れなく具体的に整理することを勧めています。このとき「漏れなく」思い出して整理することが大事です。あるいは、ストレスを感じた時に、その状況を記録しておくことも、同じような状況への備えにつながります。

 皆さんは先ほどの表から、仕事の場面で自分がどんなことにストレスを感じるか把握できましたか?

 次回は取り組みやすいストレス対処法をご紹介します。

(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)

出典:「日経Gooday」2021年6月11日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/060300009/
日経BPの了承を得て掲載しています

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