レジリエンス(自己回復力)の獲得に必要なのは健康の基本=「栄養」と「運動」

青魚に含まれるオメガ3脂肪酸と女性は葉酸摂取を推奨

渡邊 実は、米国では「毎日の運動と適切な栄養摂取」が重要とされており、特に青魚(アジ、イワシ、サバなど)に含まれるオメガ3脂肪酸と、女性には葉酸の摂取を推奨しています。

 また、英国では薬物よりも「適切な運動が有効」として、1日30分~45分程度を週3~4回と細かく時間や頻度を指定して推奨。いずれも、軽症例に対しては、薬物よりも本人のレジリエンスを刺激するような運動と栄養という面からのアプローチが推奨されていることがわかります(渡邊, 田. 臨床精神薬理 , 2008)。

運動と栄養がレジリエンス増強をサポート

五十嵐 私もクリニックの診察では、うつで会社を休職した患者さんたちに、規則正しい生活と十分な睡眠、毎日、バランスの取れた食事を朝昼晩ちゃんととること、薬を忘れずに飲み、運動もしましょう、と伝えています。

渡邊 まさに、栄養と運動。これはレジリエンス向上にも影響しますから、良い効果につながると思います。

 また、レジリエンスを意識することで、ストレスに強くなって、うつの予防や治療につながるだけでなく免疫力が向上する」こともわかっています。これはすでに、動物実験等でも証明されています。ですから、実はもうレジリエンスは概念的なものではなく、身体のいろいろなところに良い影響を与えているということです。

 ぜひ、レジリエンスという言葉を覚えて、ご自分の健康維持にお役立てください。

今回ご協力を頂いたのは…

渡邊衡一郎(わたなべ こういちろう)さん
杏林大学医学部精神神経科学教室/教授、日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床精神薬理学会専門医・指導医、精神保健指定医

1988年、慶應義塾大学医学部卒業。国家公務員共済組合連合会立川病院神経科、慶應義塾大学病院医学部専任講師(精神神経科学教室)などを経て、2012年に杏林大学医学部准教授(精神神経科学教室)、2014年杏林大学医学部教授(精神神経科学教室)に就任。

現在、杏林大学医学部付属病院・精神神経科にてうつ病(特に難治性)や双極性障害、統合失調症を初めとしたさまざまな治療にあたっている。

(まとめ:福井 弘枝=フリーライター)

出典:「日経Gooday」2022年9月14日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/082300020/
日経BPの了承を得て掲載しています

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