曲げられても、元に戻るバネのようにレジリエンス(回復力)を身につけよう

レジリエンスが低いと病気やケガの経過がよくない

 一方で、レジリエンスが低いと、さまざまな疾患やケガなどの治療における経過が良くないということもわかってきています。では、レジリエンスが高い、強い(ある)と何が良いのでしょうか。具体的な例を見ていきましょう。


「ストレスとレジリエンスの高低」が「仕事に与える影響」をグラフ化。「転帰」とは疾患の経過や結果のことを言います

渡邊 この図は2017年の米国での調査によるもので、ストレスとレジリエンスの高低が、仕事に与える影響(=転帰。疾患の経過や結果)を表しています。

図の棒グラフの
「高負荷」とは、仕事の要求水準が高く、サポートが少ない環境の場合、
「低負荷」とは、仕事における負荷が低い環境での場合、
を表しています。

レジリエンスが高いとストレスに強く、低いとストレスを多く受けやすい

 青い棒グラフが低レジリエンスの人たち、赤の棒グラフは高レジリエンスの人たちを表しています。

 そして、例えば、左上の「ストレススコア」グラフでは、仕事の要求水準が高い環境(高負荷)と、仕事の負荷が低い環境(低負荷)のどちらの状況においても、レジリエンスが低い人たち(青い棒グラフ)は、高レジリエンスの人たち(赤い棒グラフ)よりも、ストレスを多く受けていることを示しています。

 同様に、上の段の左3つは「燃え尽き」や「うつ病の可能性」、「睡眠問題」といった健康にかかわる問題に対して、レジリエンスが低い(青棒)人たちの方が、転帰=疾患の経過や結果が不良となっています。

レジリエンスが高いと仕事の満足度も高い

 一方で、左下の「仕事の満足度」グラフのみ、レジリエンスが高い(赤棒)とレジリエンスが低い(青棒)人たちよりも仕事の満足度が高いと示しています。

 つまり、職場においてさまざまな状況に遭遇した場合においても、

 レジリエンスが高い人たちは、レジリエンスが低い人たちよりも、ストレスを受けにくく、うつ病になりにくく、睡眠問題や生産性の低下といった問題も少ない。一方で、レジリエンスが低いと「燃え尽き」や「うつ」「睡眠問題」などの問題を抱えやすいということがわかった調査結果となっています。

五十嵐 渡邊先生のお話を聞いて、レジリエンス力が高いか低いかということが、病気だけではなく、健康に関しても大きく影響していることがわかりました。

 したがって、うつや睡眠問題などを抱えている人たちが、そうした健康課題を改善させるには、レジリエンス(回復力)に関わる要素を刺激するなどして、レジリエンスを高めることが有効だということを教えていただきました。

 次回は、自分のレジリエンス(回復力)を高めるには、どうしたらよいのか、具体的な対策などについて渡邊先生に教えていただきたいと思います。

今回ご協力を頂いたのは…

渡邊衡一郎(わたなべ こういちろう)さん
杏林大学医学部精神神経科学教室/教授、日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床精神薬理学会専門医・指導医、精神保健指定医

1988年、慶應義塾大学医学部卒業。国家公務員共済組合連合会立川病院神経科、慶應義塾大学病院医学部専任講師(精神神経科学教室)などを経て、2012年に杏林大学医学部准教授(精神神経科学教室)、2014年杏林大学医学部教授(精神神経科学教室)に就任。

現在、杏林大学医学部付属病院・精神神経科にてうつ病(特に難治性)や双極性障害、統合失調症を初めとしたさまざまな治療にあたっている。

(まとめ:福井 弘枝=フリーライター)

出典:「日経Gooday」2022年8月12日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/080100019/
日経BPの了承を得て掲載しています

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