復職しても、すぐに再休職してしまう場合

隠れているのは双極Ⅱ型障害? 大人の発達障害?

 そして近年、うつの再休職を繰り返す原因として、わかってきたのが、うつの症状の裏に別の疾患=背景疾患が隠れている場合があるということです。その背景疾患が「双極Ⅱ型(にがた)障害」と「大人の発達障害」です。

 「双極Ⅱ型障害」は、ごく短期間の躁(そう)状態の後に、長いうつ状態がやってきて、その気分の波を繰り返します。

 そしてこの短期間の躁状態は、時に4日間程度の、しかもそれほど目立つ行動が少ない、ごくごく軽い躁状態であるため、本人は自分が躁状態だとは認識できず、また、周囲の人にも気づかれにくいため、うつだけを繰り返しているようにみえるのが特徴です。

程度が軽く周囲に気づかれにくい大人の発達障害

 また、「発達障害」は普通、子供の頃に周囲が気づくことが多いものですが、「大人の発達障害」は大人になるまで周囲に気づかれないほど、その障害の程度が軽いのが特徴です。

 しかし社会に出て仕事をするようになると、苦手なことにも仕事として取り組まなくてはならなくなり、うまくできずに困ったり、悩んだりした結果、うつの症状が表れる場合が多いものです。

 今回から3回に分けて「うつで再休職を繰り返す場合に、背景に隠れている別の原因とその診断、治療と対応方法」について、お伝えしていきます。まずは、背景にある原因を診断することの難しさについて。

 これをお読みの皆さんの周囲に、うつによる再休職を繰り返している会社員の方がいらしたら、ぜひ参考にしていただければと思います。というのも、背景疾患の存在というのはご本人か、あるいは周囲の誰かが「もしかしたら?」と疑ってみない限り、見つけることが難しいものだからです。

診察室での短い時間では診断できない


診察室での短い時間では診断できないこともあります

 さて、まず最初に知っておいていただきたいのは、「双極Ⅱ型障害」と「大人の発達障害」という、この2つは、そもそも診察室内での短い診察だけで診断するのは大変難しいものだということです。

 逆に言えば、診断が難しいからこそ、気づかれにくく、見過ごされてしまう。私が、うつの症状の背景に、これらの原因があるのではないかと気づくことができたのは、クリニック内で復職支援の「リワークプログラム」を行っていたからです。

 私は2003年に東京のビジネス街・虎ノ門に精神科クリニックを開業し、うつで休職した会社員を数多く治療してきましたが、その当時から、復職後しばらくすると彼らの大半が再休職して戻ってきてしまうことに頭を抱えていました。

 その対策として、患者さんにクリニックに一定の期間、通勤のように通ってもらって、職場のように何らかの作業をしてもらい、復職する前に、復職後の勤務の日々に似た環境の中で、それに少しずつ慣れてもらう復職支援のプログラムを2005年に作りました。それが「リワークプログラム」です。

 当クリニックで、このプログラムを経て復職した会社員はこれまでに1800人を超えました。プログラムに参加せずに復職した人の復職後3年の就労継続率はわずか2割ですが、プログラム経験者の復職後3年間での就労継続率は7割となっています。

 現在もこのリワークプログラム参加メンバーは常時70名ほどいて、朝から夕方まで会社に出勤しているのと同じようにクリニックの中の施設で集団で過ごします。そこでは復職後に備えて体調管理方法や、病気との付き合い方を学び、プログラム参加中は医師をはじめ、看護師や保健師、精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士などの複数のスタッフが彼らを常時、見守っているという環境です。

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