曲げられても、元に戻るバネのようにレジリエンス(回復力)を身につけよう

「ストレスを受けにくい心と身体」を得るためには?

 これまで数回に渡って「ストレス」をテーマにお伝えしてきました。同じようにストレスを受けても、人によって、その感じ方、表れる症状などは、それぞれ異なること。

 そして、ストレスを感じたら放置せずに、できるだけ早く対処してストレスを解消しておくのが良いということ。その方法として、コーピングや認知行動療法、マインドフルネスなど、さまざまなストレス対策方法があることを、お伝えしました。

自己回復力アップでストレスに強くなる

 今回、新たにお伝えするテーマは「レジリエンス」です。一般的には「回復力」という訳語で紹介されています。よく例えられるのが、「曲げられても、跳ね返って元の形に戻るバネ」のイメージであり、「しなやかさ」や「復元力」、「適応力」などの、ストレスを受けても、それを跳ね返して自力で元に戻れる力のことを言います。

 つまり、ストレスを受けてから対処するだけではなく、ストレスを受ける以前に、ストレスに強い耐性、ストレスを受けても跳ね返せる力、自力で回復する力=レジリエンスを身につけておこう、というものです。

<この記事に掲載されている主な内容>
・楽観力、冷静に物事をとらえる力、忍耐力
・「レジリエンス力(りょく)」を測る物差しとは…
・オバマ元大統領が日本人の「レジリエンス」を高評価
・レジリエンスが低いと病気やケガの経過がよくない
・レジリエンスが高いとストレスに強く、うつ病にもなりにくい

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。

どうしたら身につけられる? 自己回復力=レジリエンス

第14回 レジリエンス(回復力)こそ健康維持のカギ
2022/8/12 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長

 この連載では毎回、ストレス対策分野の専門家の方々に、具体的な対応策をお聞きしてお伝えしています。今回は「レジリエンス(回復力)」について、杏林大学医学部 精神神経科学教室 渡邊衡一郎教授にお話を伺いました。

五十嵐 皆さんは「レジリエンス」という言葉をご存じでしょうか。この言葉は「ストレス」と同じく、もともとは物理学用語です。ストレスが「ゆがみ」や「ひずみ」を意味するのに対して、レジリエンスは「回復力」「復元力」「弾力性」という意味を持っています。

渡邊 そうですね。仮に何かしらのストレスを受けたとしても、自分自身にレジリエンス(回復力)が備わっていれば、そのストレスを「跳ね返せる」、あるいはそのストレスを受けた状態から「回復できる」。レジリエンスは、そういう強い味方であると、とらえていただければと思います。

 実は、この「レジリエンス」という言葉は、2021年の秋冬シーズンに衣料品メーカーのユニクロが、発熱素材のインナー衣料のCMで、「あなたがピンチのとき、内側から効いてくる力がある。レジリエンス=回復力」というキャッチコピーに用いて発信していました。

 このCMで「レジリエンス」という言葉を知った方も多いのではないかと思います。当時、既に、ちょうどコロナ禍の最中でしたから、「回復力」を意味する、この言葉は大変印象に残ったのではないでしょうか。

五十嵐 なるほど。回復力という、その言葉通り、「レジリエンス」は「ストレスに対抗する力」ということですね。

 では、それは具体的に、どういうものでしょうか。また、どうしたら、我々は「レジリエンス=回復力」を身につけられるのか。そして、そもそも、いま自分にレジリエンス=回復力が、どのくらいあるかということは、わかるものなのでしょうか?

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